電音の歩み

電子楽器を中心とし、ものづくり関係も含めて紹介していきます。

デジタル版Frequency Shifterの検討 その1 考察と意義

■アナログ版Frequency Shifter

アナログ版Frequency Shifter は、周波数を差の形でシフトできる他のモジュールでは得難い不思議な効果のモジュールであり、ディープなモジュラーファンからは比較的好評で、依頼を受け数台納品したことがあります。

しかし、核となるDomeFilterを構成する各段のオールパスフイルタがシビアで、各段のフィルムコンデンサの選別が必要でかつ、各段の抵抗がすべて異なる値のため、実装の負担が大きく、あまり作りたいものではない。

また、乗算につかうDBMの調整にも高精度が要求され気を使います。

 

■需要は気にせず興味のみ

そこで、一度デジタルで実現してみようという興味が湧いた。

ただ、アナログであるから良い(アピールボイントとして)という面と、実際に性能面でもアナログが良かったという可能性もあるが、需要の有無は気にせず検討することにする。

  参考→ Frequency Shifter の検討(その1) 原理と構成について - 電音の歩み

 

■デジタルのDomeFilterは意外によいかも

まず最初にデジタルで、90度の位相差を作るには、アナログでは難しいヒルベルトフィルタが考えられるが、高次のFIRが必要で膨大な演算量が必要になると予想される。

  参考→dsPIC33FJ64GP802 (17) --- 周波数シフター (1) - シンセ・アンプラグド 

 

そこで今回のアイデアは、デジタルで常識的なヒルベルトフィルタではなく、全くアナログ版と等価なDomeフィルタをデジタルで実装してみようというものです。

 

両フィルタを簡単に比較すると、

ヒルベルトは入力に対して全周波数で90度位相をシフトできる。

 高次のFIRフィルタが必要でアナログでは困難。

・Domeは、2系統のオールパスフィルタ(フェーズシフタ)の出力が相対的に全周波数で90度シフトになるように設計される。位相しか変えないオールパスフィルタは、人間の耳には音の変化がわからないのを利用して、片側を原音とみなすことにより結果的に全周波数で90度位相をシフトできることになる。

 オールパスフィルタは、デジタルではIIRフィルタで構成可能できそうなので、非常に演算量が少なくマイコンのソフト処理で実現できるはず。

 

また、Domeフィルタは線形フィルタなので、入力信号を適切に帯域制限していれば、フィルタによる新たなエイリアシングの発生による音の濁りは生じない。(当然後段の加減と乗算はエイリアシングを有むが)

 

次回はマイコンの選択