EuroRack版 山下シンセプロジェクト(SG + LFO その2) 回路決定しました。
前回のプログ
で決定したように、SG( Sweep Gen.) とCVでゲインが可変出来る VCALFO の複合モジュールの回路決定しました。
SG + LFOモジュールの構成
Sweep Generator + VCALFO を1モジュールとします。
■ Sweep Generator
Gate等に同期して、上昇するCVを発生する。
キーオフでピッチが上昇するCVの生成や、 次のVCALFO と接続すると簡単に、ディレイビブラートが実現できます。
入力 Gate
コントロール Sweep開始するGateエッジ(立ち上がり、立ち下がり)
Sweep Time Constant
出力 CV
■VCALFO
振幅をCVで制御できる LFO(世界初かも?)
入力 CV(デフォルトで SG の出力が接続されています)
コントロール Frequency
EuroRack版 山下シンセプロジェクト(LFOその1) LFOとSGの複合モジュールにします
基板サイズと発注
今まで、すべての基板を作っているElecrow では、プロトでの基板サイズの単位が 50mm * 50 mm なので、これに合理的に収まるようレイアウトしています。
Euro のパネルは縦128.5mm なので、基板の縦サイズは 110mm くらい欲しいのですが、勿体ないので縦は100mmちょうどに留め、幅は50mm以下にしています。
Elecrowでは、最小プロトである、50mm*50mm*5枚プロト製品が、現在セール中で、なんと言うことでしょう、価格($4.9)そのままで、基板サイズを100mm*100mmまで増やせます。
ということで、既に設計しているVCA基板は、今回のLFOと合わせて実質無料で製作しようという魂胆で、発注を遅延しています。
書籍「今作るなら」でのLFOの仕様
「今作るなら」では、2つのLFOを紹介しました。
LFO1
LFO1は、かなり工夫したもので、CV で三角波と方形波の振幅が変わる変わったLFO です。そしてGateに同期してアタックの変わるCV 生成回路と一体化し、ディレイビブラートが簡単に実現できるようにしています。
モジュラーシンセでは、実はディレイビブラートのパッチングは簡単ではありません。
LFOの出力をVCAに通してVCOを変調し、VCAにはリトリガブルなEG(AR)のRは最大にし、Aでディレイを調整します。 実際にやろうとすると、DC付近まで通るようなVCAが必要ですし、EGにもリトリガブルなものが必要なので、そう簡単にはできません。
そういうわけで、有用なディレイビブラートが簡単に得られる仕掛けを用意したものです。
LFO2
LFO2は、デューティ可変のLFOで、三角波の立ち上がりと立ち下がりのデューティをVRで連続可変し、ノコギリ波→三角波→逆ノコギリ波 がだせるものです。方形波のデューティも変わります。
いずれも、モジュールとしては小物なので、合わせてひとつの8HPモジュールにできると良いが、ジャックとVRの数がオーバーしそうです。
ホント、Euroのパネルは小さい。
結論としては、LFO1とSweep Gen.(Gateに同期して上昇するCVを作る)を備えた、6HPモジュールにする方向です。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト(VCAその2) VCAの回路が決定しました。
EURO モジュラー用の VCA 回路設計終わりました。
このVCAはお勧めです。
といっても、結局、連載の回路のマイナーチェンジに落ち着き、40年前の連載の回路が良く出来ていたことが確認できました。逆を言えば、進歩が無い。
VCAの重要な機能として、
・シグナルインジケータ
オーディオ信号が出力されているのかを知らせる
・ピークインジケータ
オーディオ出力が±5 V を超えたことを知らせる
があります。
これを用いると、「音が出ない」「音が歪む」を知らせて、適切に調整が簡単にできるようになります。
コネクタP2 には、LIN / EXP を切り替える3P のトグルスイッチを接続します。
まず、LIN 側にします。
調整方法は、
(1) Ain にVCO の10 Vp-pの三角波 or ノコギリ波を入力し、VR4 でゲインを最大にする。
(2) オペアンプ(U1A)の出力(1pin)をオシロスコープで観測し、InitialGain VR を上げたとき、
オーディオ信号が、0 V を中心に出力されるように、RV1 でDCバランスを調節します。
(3) CV1 に CV = 10 V を入力し、オーディオ出力が 10Vp-p (ピークインジケータが点く直前)になるよう、InitialGain を回します。
これが、LIN モードでの最適設定です。
(4) 次に、スイッチをEXP 側に切り替えます。
(5) CV1 に CV = 10 V を入力し、オーディオ出力が 10Vp-p (ピークインジケータが点く直前)になるよう、RV2を調節します。
これが、EXPモードでの最適設定です。
この状態では、 LIN/EXP を自由に切り替えることが出来ます。
EXP モードでの、LIN とは全然違うパーカッシブな表現が可能です。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト(VCAその1) VCAの回路
VCAの回路
VCAは、Euroに対応して電源電圧を12Vに変更する程度で、設計はほぼ書籍のままでよいと考え、
書籍の「今作るなら」で 設計したVCA 回路をチェックするために作った基板を流用して、むりやりEuroパネルに納めて、仮のVCAを試作しました。「(VCAその0) 仮VCA」のやつです。
仮とは言え、モジュラーのケースに納めて、実際に使ってみたおかげで、重大な問題が判明しました。
Lin/Exp の切り替えがとても使いづらい。切り替えるたびに Initial Gain VR を調整し直さなくては成らず、しかもこの調整がなかなか難しいのです。
私のVCA は、Lin/Exp の切り替えモードが特徴の一つなのですが、シグナルとピークインジケータもあり、当時快適に使えていた記憶がありました。
もう一度昔のVCA(下図)を振り返ると、使いやすくする配慮がしてありました。
Initial Gain VR は、Liner側の感度設定とし、
Expに切り替えたときに、感度差を吸収する独立した調整(VR2)が設けてありました。そのため、Initial Gain VRを再調整するこなく、自由に切り替えができる設計でした。(VR1はDCバランスを取る目的のもの)
それに対し「今作るなら」の回路は調整が独立していないため、Lin/Exp 切り替えの度にInitial Gain VR を調整し直さないと使えないものになっていました。(完全な改悪です!!)
なぜこんなことになったのでしょうか。
「今作るなら」の回路を検討する際、初ラ連載のVCAの回路を見て、Lin/Exp 切り替え回路が冗長な気がして、「抵抗(R8)一本を挿入するかしないか」の切り替えだけでシンプルにLin/Exp 切り替えができる、エレガントな回路に改良したつもりになっていました。(その結果、独立した感度調整は省略されますが、これはInitial Gain VR ですれば良いだろうと考えてしまっていました)
今考えると、同じ人間の考えることなので、40年前もたぶん、今回の回路も候補にはなったが結局ボツにした様な気がします。
やはり、実際のシステムの中で使いながら回路を決めていた当時に比べ、執筆するために(最低限の動作確認はしていましたが)机上で設計しただけだったので、こんなことを見落としてしまったのだと思います。 これは反省せねば成りません。
ということで、今回のEuro版の回路は、初ラ連載当時の物にもどしました。
HPの書籍のサポートの方にもこの情報を載せています。
工学実験フェア
今日は、祭日にかかわらず、大工大のイベントです。
大学全体のイベントで、全体で100近くのワークショップや体験テーマが揃っています。
夏休みの自由研究になるということで、本当に多くの小学生で大学構内が埋め尽くされていました。
私のワークショップは、例の「光るLEDバッジを作ろう」です。
相変わらず、女の子が大半でした。
みんな初めてのはんだ付けを練習し、本番はキッチリ上手にはんだ付けできました。
今回は全員、一発で成功。いままでに無い出来でした。
小さい基板なので、LEDが浮かないようにお母さんに押さえて貰っています。
この子も上手にはんだ付け出来ました。
次は、バッジ表面にアクリル絵の具で、お絵かきします。
アクリル絵の具は、ダイソーで調達したもので、
光沢タイプ、パールカラータイプ、ラメ入り、を用意しています。
この男の子は、芸術家!!
筆を使わず、指で描いていました。
これが完成した作品です。
他には、こんな作品も・・
これはトラッキーですね。
この子は、完成して大喜びでした。
この子は、バスケ少女。バスケットボールを描きました。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト ケース作り3 仮組みし動作確認
桐箱シンセケース仮組みしました。
前回の電源回路とLED電飾を内蔵したパワーボードを搭載しています。
搭載モジュールは、左から
・MIDI-CV
・VCO
・VCO(一次試作ver.)
・VCF
・EG
あとは仮モジュールなので省略。
前回の整流回路は天井に張り付けています。
レギュレータはアルミ放熱板に固定し空中配線しています。
実際に使ってみて放熱量が多いようなら、ケース背面に穴を開ける必要があるかも知れません。
折角の桐箱なので、できれば穴は開けたくないですが・・
電源を入れると、各モジュールが発光します。
ボリューム固定用のサブパネルのあるモジュールの方が、サブパネルの導光効果で綺麗です。
パワーボードの電飾を入れるとこうなります。
イベント用に開発した「光るミニツリー」の回路をまるまる実装しているので、8個のLEDの色がじわじわ変わります。
このLEDの導光板は仮の物です。今後の課題です。
ステージ映えすればと狙っています。
まだ各モジュールのパネルデザインも決まってないので、それによりスケルトンの具合も変わるので、見栄えはまだ未知数です。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト ケース作り2(電源作り)
EUROラックの電源を製作します。
EUROでは+12V,−12Vと+5Vの電源が用いられます。
シンセの電源というと、モーグなど昔のモジュラーの時代は、AC100Vをトランスで変圧、整流してシリーズレギュレータで安定化する素直な方式が普通で、スイッチング電源などは考えられませんでした。
モジュールもケースも小型なEUROでは、まさに何でもありの世界で、スイッチング電源も普通に使われています。 スイッチングでも現在の技術で十分配慮されていればローノイズにできると思いますが、配慮が不足しノイズや音の濁りを感じさせる場合も有るようです。
折角ケースを作るなら、電源でも特長を出したいと思い時間を掛けて検討しました。
シンセ電源ので考え得る構成としては、
① ケース内にトランスを内蔵、整流+シリーズレギュレータ構成
ノイズが少ないが、かさが高い。
② ケース内にスイッチングレギュレータを内蔵する構成
電流は取れるがノイズが多い。
③ スイッチング方式のACアダプタを用い、ケース内のDC/DCコンバータで負電源を作る
電流は取れるがノイズが多い
④ スイッチング方式のACアダプタを2個使い、ケース内のシリーズレギュレータで再度安定化
ケース内の重が小さくノイズも少ないが、ACアダプタ2個は扱いにくい。
⑤ AC出力のACアダプタを使い、ケース内で整流方法を工夫して正負電源をつくる構成
ノイズは少ないが、あまり電流が取れないので、小型ケースで採用されることが多い
こう整理すると、パーフェクトな方式はないことが分かります。
今回、小さめのケースで扱いやすくてノイズの少ないことを重視すると、⑤の方式が有力です。
昔は正負電源が必要な機器でよく使われていましたが、最近は見かけないですね。それでもAmazonでは12V1.6Aのものが入手できます。
図1が、今回の回路です。ACアダプタは2次側1巻き線のトランスなので中点タップを利用する両波整流などは使えず、ずいぶん悩みました。まあ、趣味の世界ではこれが楽しみなんですが・・
図1
まず、図2は、正負電源を作るためによく使われる整流回路です。Doepferの小型ケースでも採用されています。これなら巻き線が1系統のトランスから簡単に正負電源が構成できます。
図2
正の半波がプラス側、負の半波がマイナス側を担当するこの方式でも、十分大きなコンデンサを用いると、正負それぞれトランスの定格電流値の40%程度が得られます。
しかし通常、正側の電流消費の多いシンセの回路では、負側の電流が少ない分を正側に回せなず、融通が利きません。
そのため正側の電流を確保するには、正負の半波の両方を使うブリッジ整流を用いたいところです。このように、正の電流が多く取れる整流回路を探しましたがなかなか良いのが見つかりません。
ブリッジ整流の正側に加えて別系統の整流をするためにはAC側に直接コンデンサを接続する図3の様な倍電圧出力しかなさそうです。
図3
しかし倍電圧が必要なわけではないので、少しトリッキーなモディファイをします。
1.ダイオードとコンデンサの向きを全て逆にします。+Vが−V、+2Vが−2Vになります。
2.ここで、−Vをグランドと見なすと、0Vが+Vになり、−2Vが−Vになります。
こうすると望み通り、正側がブリッジの両波整流で、負側は半波になっています。
実際の動作を見るとかなり面白い動きをします。
本来のブリッジは正負の半波には同じ電流が流れるものですが、
この回路では、負の半波のみ負側からも消費されるため、負の負荷が増えると、ブリッジのバランスが崩れ、本来両波である正側が結果的に半波に近い動作になります。
逆に負側の消費が少なければ、完全な両波整流になり100%を正で消費できるという、理想的な動作になることが分かります。
+V側のコンデンサは、2200uF × 3 、−V側は、両方とも 2200uF × 2 です。
正側は余裕で1A以上流せます。
下の写真は、+V側の電流1A、−V側無負荷の時の電圧です。
+V側は、リップル波形から両波になっているのが確認できます。
コンデンサの容量をもう少し大きくして、リップルの振幅を減らしたいところですが、
低ドロップの三端子レギュレータを使うので12V1Aは確保できそうです。
次の写真は、+V側は同じく1Aで、−V側を0.4Aにした時の電圧です。
−V側は完全な半波の波形、+V側は両波のバランスが崩れて半波と両波の間の波形になっていることが分かります。
ただ、正側の負荷が負側より軽くなると期待した動作にならず、負側の電圧が小さくなりかわりに正側の電圧が大きくなるという欠点はありますが、試してみるとこの条件さえ満たせば安定に動作することが確認できました。
採用決定です。