EuroRack版 山下シンセプロジェクト(VCO その3) 波形整形部
VCOの波形整形部です。
「伝説の・・・」では、連載での基板構成が発振部と波形整形に分かれていたのと互換をとるため、波形整形部を省き発振部だけの今作るならになっていました。初ラ連載の波形整形部とつないでもらおうとの考えでした。
今回、12V電源化のためと、Euroの小さな基板に実装するための部品点数と調整箇所の削減を目指しもう一度見直すことにしました。
また、Sync入力を立ち上がりエッジに変更したのに対応して、鋸歯状波も立ち上がりエッジのある逆極性に変更します。
DCを出力しないVCOのレベルシフトとしては、交流結合を利用すると簡単で調整不要になるので採用し、12V電源化により発振振幅が減少したので、反転ACアンプで増幅し±5Vで出力するようにしました。
しかしシンセで交流結合を利用することは、慎重な検討が必要です。
例えば、鋸歯状波にSyncを掛けると上下非対称波形になりDC成分が乗ります。この僅かなDC変動は、鋸歯状波の音声出力としては問題にならずOKです。
しかしこの波形を三角波変換に与えると問題が生じます。
Syncにより変動したDC成分が折り返して三角波を作る際の動作点を狂わし、波形が崩れるのです。したがって、三角波変換回路の入力は、DC成分まで必要になることになります。
そこで調整は必要になりますがDCレベルシフトを用いて三角波変換に与えるようにしました。
三角波変換回路は、2点改善しています。
1点目はオペアンプのフィードバックループに入れたことでDCレベルが安定化されたことです。この回路は、正負の電源電圧の絶対値が等しければ、折り返しレベルが正確にGNDレベルになりますので使いやすくなります。
当初は、初ラ連載と同様にNPNトランジスタを使っており、連載と同様に、鋸歯状波の折り返しでの遅延によるグリッジが発生します。 グリッジの原因はトランジスタの特殊な使い方に起因しています。(この動作の詳細な説明は、「連載の・・」のP.41に詳しく書いていますので省略します。)
つまり、下図のような正極性の鋸歯状波が入力された場合、
鋸歯状波の前半ではトランジスタのB-Cが逆バイアス、つまりまともなトランジスタ動作になり、ゲイン-1の反転増幅としての動作になります。逆に、鋸歯状波の前半ではトランジスタのB-Cが順バイアス、つまりダイオード動作になり、ゲイン1の非反転動作になります。
ここで、グリッジがでるのは、鋸歯状波の後半と次の波形の前半のつなぎのところです。
後半はダイオード動作で早いのに対し、次の鋸歯状波の前半はトランジスタ動作なのでスイッチング速度が遅いため、うまくつながらずグリッジになります。
グリッジを無くすために、その後にある反転増幅のフィードバック部にコンデンサを付加しLPF動作をさせることでグリッジを除去します。しかし1次のLPFなのでグリッジを消そうとすると相当低いカットオフになるため、1KHz以上で三角波の振幅が低下する欠点がありました。
これはしょうがないと思っていたのですが、このプロジェクトの相棒の伯氏から改めて課題(グリッジを消すための安易なLPFにより、三角波だけ高域の振幅が減る)として取り上げられ、改めて検討した結果、良い方法を思いつきました。
まず、鋸歯状波を反転するとグリッジがほぼ消えるという現象を偶然発見したことが始まりです。
反転鋸歯状波は、トランジスタ動作とダイオード動作が逆転されるため、つなぎの前半が遅く後半が早くなるのでグリッジが現れにくくなるのだと考察し、鋸歯状波を反転する代わりにトランジスタをPNPにする方法を思いつきました。
このアルゴリズムにより正極性の鋸歯状波からグリッジがほぼ無い三角波が得られました。
このPNPトランジスタのコレクタの負荷にコンデンサをかますことにより、トランジスタ動作をさらに遅らせることが出来るためグリッジを撲滅できました。
また、20KHzまで振幅が減少しない三角波変換が実現できました。
PWM動作を行うコンパレータとして1%程度のヒステリシスを付けていましたが、実験の結果ヒステリシスがなくても振動(チャタリング?)が発生しないことが分かり回路を簡単化できました。
大学のイベント 川上村親子理科教室
6月11日
今日は、大学の地域連携関係の行事で、奈良の川上村の小学校でイベント(親子理科教室)をやります。
川上村は、吉野桜の吉野のまだ先の山間の村で、川上村小学校は全校児童23名です。
10名の補助学生を含む関係者を載せたマイクロバスは、10時に大宮学舎を出発。
空いていて約2時間の行程です。
写真は、途中休憩の道の駅です。
途中昼食を摂り、2時から「親子理科教室」が始まりました。
1名欠席ですので児童22名とその親御さんが参加してくれました。
内容は、冬の八尾ロボットコンテストでやった「LEDバッジ」です。
八尾では、時間を分けて、6名(高学年)を3回やりましたが、
今回は同時に22名が同時で、しかも1年から6年までいますので、なかなか厳しい条件です。
そのため十分時間を掛けて準備をしてきました。
まず一度に、22名のはんだ付けをサポートするのは困難ですので、
先にはんだづけするグループと、先にお絵かきをするグループに、グループ分け、
時間を区切って作業をチェンジすることにしました。
こうすると、はんだ関係とアクリル絵の具関係の用具が半数分で住みますし、
サポート学生もはんだづけグループに集中できます。
写真はお絵かきグループの様子です。
どうしてもはんだづけよりも時間が掛かるので、
事前に描く絵の下書きの予習をお願いしたため、みんな素晴らしい絵を描いてくれました。
このテントウムシは見本にもないパターンのユニークなものです。
次の写真は、はんだ付けを先にするグループです。
子供達は目の色を変えてバッジ作りに励んでくれました。
また、1年から6年まで混在という過酷な状況の中、精鋭の学生10名は頑張ってくれました。
1年の子が小さな手で上手にはんだ付けするのを初めて見ました。
3時半に終了し撤収。
4時過ぎに川上村を後にしました。
千林大宮に着いたのは6時過ぎ。
おつかれさまでした。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト(VCO その2)
とりあえずVCOから始めることにしました。
回路としては、「伝説の・・」の今作るなら編の回路が基本になりますが、書籍では波形整形部は公開していませんでした。
また、書籍は連載との互換をとるため電源が±15Vです。これをEuroの±12Vに変更しなければなりません。
■12V動作への変更
VCOで12V化の影響が出るのは、アンチログを含むCV関係の回路と、波形の振幅に関わる波形整形部になります。 振幅については、12V動作の555で発振させると発振振幅が小さくなる分も影響を受けます。
Jackのパネル面でのレイアウトとしては、各上から
Jack1 CV input ( Oct /V )
Jack2 Sync input
Jack3 CVFM input
Jack4 CVPW input
Jack5 Saw tooth wave output
Jack6 Triangular wave output
Jack7 Pulse wave output
ボリュームは
VR1 Freq(10 octave)
VR2 Tune( ±1 octave)
VR3 FM ( Jack3 CVFM CVのデプス)
VR4 PWM(Jack4 CVPW CVのデプス)
VR5 PW controle
これだけ詰めたら、ボリュームもジャックもギチギチです。もう限界でしょう。
基板はElecrowのprototypeで作るので50mm*50mm単位ですので、なんとか100mm*50mmに抑さえました。
特殊な部品は、DualPNP(1KΩのtemp抵抗付き)はBeatnic製です。
beatnic.jp : Matched Pair NPN module with T.C
アンチログの分圧抵抗RV1+R5 は、(Q1)DualPNPの端子1-5間に1KΩのtemp抵抗が接続されていることが前提の回路です。
また、J-FETは、2SK30(Y)とJ113が使用できますが、ピン配置が違うので両用のパターンにしています。(実装はどちらかで良い)
オシレータシンクは、入力波形の立ち上がりエッジで掛かります。したがって、波形整形部では、鋸歯状波を反転して出力する予定です。
555はバイポーラを使います。
EuroRack版 山下シンセプロジェクト(VCOその1) スタート
今年初めから、伯さんと武田さんとで、アナログシンセのビルダー育成を目指したプロジェクトを始めました。
とりあえず比較的標準的な回路で初級者にも作りやすいモジュラーシンセのキットを開発して、ワークショップをやろうということにしています。
まずはキットの開発からスタートです。
具体的には、EuroRack版の山下シンセのイメージです。
EuroRackにする理由は、今モジュラーシンセを作るならEuroRackやろということと、
パネルの小さなEuroRackシステムにしてパネル裏配線の無い作りやすいものにすることです。
モーグやローランド風のおおらかなパネルを持つオリジナルの山下シンセは、パネル裏でのボリューム、ジャック、スイッチなどの配線が多く、初級者には難易度が高いので。
ただ問題は、私も伯さんもEuroRackは初めてで、狭いパネルに望むインタフェースをどう配置するか、パネル面での信号の流れはどうするのが普通かなどEuroの哲学が分からず難儀しました。 実際にEuroRackモジュラーシンセを使って演奏されている方にも協力を仰ぎ進めてきました。まぁ結局の所よく分からんと言うことでしたが。
なじみのあるモーグ等では、オーディオ入力系は左上、CV入力系は左下、出力は右側というパネル配置がディフォルトでしたが、Euroではそんなことをするスペースがない。Doepferのパネルを見てもオーディオ系とCV系が区別されずに上から下の流れになっているし、別のメーカーのはまた違う。
パネル裏への基板の実装としては、直交配置させる構成を採ることに決めましたが、ここでもボリュームとジャックの選択で苦しみました。ボリュームと基板との取り付け強度の問題や、ボリューム軸のDカット問題(Dカットのツマミのマーク位置が基板を縦実装すると90度ずれる)他、無数にあらわれ、ボリュームとジャックに何を使うかで何ヶ月もかかりました。
Doepferの初期のモジュールは、1枚の基板の両面にボリュームとジャックを実装し、どちらも基板固定とパネル固定を行うというアクロバティックな構成です。これには奥行きが極小のジャックと、軸と首の長いボリュームをジャックの後ろに配置することが必要になります。
ありこれ擦った揉んだの結果、
ジャックはDoepferとCL1362が手に入りました。
ボリュームは、Doepferと同じもの(軸と首がながく、基板への固定金具が点いている)は特注で1000個単位になるため諦め、別作戦へ移行。
伯さんが、Doepferと同形状の固定金具のみの入手に成功したので、軸と首の長いのが見つかればOKまでこぎ着けました。
写真は、それに期待してVCOに実装してみたものです。
しかし首の長いものは見つからず、結果的にaitendoの軸だけ長いものを使いこなさざるを得ない事態になりました。
首が短いダブルナットでパネルに共締めというDoepferのテクニックが使えないため、別の方法を編み出しました。サブパネル法です。
レーザー加工機が利用できるので試作が用意と言うことでアクリルでパネルを試作しましたが、以外と良い感じなので、本番でも使いたいと思います。