VCOの波形整形部です。
「伝説の・・・」では、連載での基板構成が発振部と波形整形に分かれていたのと互換をとるため、波形整形部を省き発振部だけの今作るならになっていました。初ラ連載の波形整形部とつないでもらおうとの考えでした。
今回、12V電源化のためと、Euroの小さな基板に実装するための部品点数と調整箇所の削減を目指しもう一度見直すことにしました。
また、Sync入力を立ち上がりエッジに変更したのに対応して、鋸歯状波も立ち上がりエッジのある逆極性に変更します。
DCを出力しないVCOのレベルシフトとしては、交流結合を利用すると簡単で調整不要になるので採用し、12V電源化により発振振幅が減少したので、反転ACアンプで増幅し±5Vで出力するようにしました。
しかしシンセで交流結合を利用することは、慎重な検討が必要です。
例えば、鋸歯状波にSyncを掛けると上下非対称波形になりDC成分が乗ります。この僅かなDC変動は、鋸歯状波の音声出力としては問題にならずOKです。
しかしこの波形を三角波変換に与えると問題が生じます。
Syncにより変動したDC成分が折り返して三角波を作る際の動作点を狂わし、波形が崩れるのです。したがって、三角波変換回路の入力は、DC成分まで必要になることになります。
そこで調整は必要になりますがDCレベルシフトを用いて三角波変換に与えるようにしました。
三角波変換回路は、2点改善しています。
1点目はオペアンプのフィードバックループに入れたことでDCレベルが安定化されたことです。この回路は、正負の電源電圧の絶対値が等しければ、折り返しレベルが正確にGNDレベルになりますので使いやすくなります。
当初は、初ラ連載と同様にNPNトランジスタを使っており、連載と同様に、鋸歯状波の折り返しでの遅延によるグリッジが発生します。 グリッジの原因はトランジスタの特殊な使い方に起因しています。(この動作の詳細な説明は、「連載の・・」のP.41に詳しく書いていますので省略します。)
つまり、下図のような正極性の鋸歯状波が入力された場合、
鋸歯状波の前半ではトランジスタのB-Cが逆バイアス、つまりまともなトランジスタ動作になり、ゲイン-1の反転増幅としての動作になります。逆に、鋸歯状波の前半ではトランジスタのB-Cが順バイアス、つまりダイオード動作になり、ゲイン1の非反転動作になります。
ここで、グリッジがでるのは、鋸歯状波の後半と次の波形の前半のつなぎのところです。
後半はダイオード動作で早いのに対し、次の鋸歯状波の前半はトランジスタ動作なのでスイッチング速度が遅いため、うまくつながらずグリッジになります。
グリッジを無くすために、その後にある反転増幅のフィードバック部にコンデンサを付加しLPF動作をさせることでグリッジを除去します。しかし1次のLPFなのでグリッジを消そうとすると相当低いカットオフになるため、1KHz以上で三角波の振幅が低下する欠点がありました。
これはしょうがないと思っていたのですが、このプロジェクトの相棒の伯氏から改めて課題(グリッジを消すための安易なLPFにより、三角波だけ高域の振幅が減る)として取り上げられ、改めて検討した結果、良い方法を思いつきました。
まず、鋸歯状波を反転するとグリッジがほぼ消えるという現象を偶然発見したことが始まりです。
反転鋸歯状波は、トランジスタ動作とダイオード動作が逆転されるため、つなぎの前半が遅く後半が早くなるのでグリッジが現れにくくなるのだと考察し、鋸歯状波を反転する代わりにトランジスタをPNPにする方法を思いつきました。
このアルゴリズムにより正極性の鋸歯状波からグリッジがほぼ無い三角波が得られました。
このPNPトランジスタのコレクタの負荷にコンデンサをかますことにより、トランジスタ動作をさらに遅らせることが出来るためグリッジを撲滅できました。
また、20KHzまで振幅が減少しない三角波変換が実現できました。
PWM動作を行うコンパレータとして1%程度のヒステリシスを付けていましたが、実験の結果ヒステリシスがなくても振動(チャタリング?)が発生しないことが分かり回路を簡単化できました。